「なめとこ山の熊のことならおもしろい。なめとこ山は大きな山だ。…」。童話「なめとこ山の熊」はこう書き出される。ナメトコ山は明治時代の行政文書に記述されているものの、その場所が特定できないでいた。童話の舞台は豊沢川源流一帯の山々の総称かと思われていたが、地元の研究家などの調査によりその位置を、それまで無名の860mの山に比定され、1996年賢治生誕百年祭の年に国土地理院の地図に記載されることとなった。所々藪に覆われているものの登山道もつけられ、山頂まで登ることができる。

ナメトコ山遠景
ナメトコ山遠望 豊沢幕館の橋から
ナメトコ山山頂

 右の新聞記事は岩手日報の1996(平成8)年7月25日付けのもので、ナメトコ山の名前が国土地理院の地図に記載されることを伝えたもの。この年は宮沢賢治生誕百年の記念の年で、キャプションには「いきな計らい」とコメントしている。
 記事中に安政年間や慶応年間の絵図で確認されたとあるほか、明治初期の「岩手県管轄地誌」にもその名前が記述されている。ここに掲出した頁に「山」の項目中にその名を見ることができる。

国土地理院の地形図に記載されたナメトコ山

豊沢方面の地図